歯科医院での『食育』のあり方を考える〈前編〉

こんにちは、歯科衛生士・こども成育インストラクターの宗田香織です。

 

私事ですが、昨年秋から新しい歯科医院で勤務し早いもので一年が経とうとしています。

 

以前に勤務していたクリニックは、主に歯周病治療やインプラント治療を行っていたので

成人の患者さんが殆どでした。

 

現在勤務しているクリニックは地域柄お子さんの来院率も高く

以前よりお子さんの食事についての相談も多くより身近に感じるようになりました。

 

歯科医院での食事相談をするにあたって、歯科医院側は

『学校で栄養学を学んだものの食事指導するには自信がない』

『診療時間がタイトで食事相談までする時間がない』

『OHI の中でどんなきっかけで食事指導を実施していけばよいか?悩んでしまう』

 

など、様々な壁や課題があります。

 

保護者側は

『栄養面は気になるけれど毎日栄養計算など面倒なことはできない』

『歯医者さんで食事の相談が出来ると思わなかった、またその理由で相談したことがない)』

『甘い物と虫歯は関係ありそうだが、食事の仕方や噛み方で歯科疾患(虫歯・歯周病)の

予防・顎の成長や歯並びやまで影響があると思っていなかった』

 

など、なんとなく甘い物は虫歯になりやすいのかな?などのリスクは知っているものの

それ以上にリスクに繋がりやすい“食べ方”や口腔領域の成長発達や機能向上が

歯科疾患予防に繋がるという認識は残念ながら低いと感じます。

 

ですので、それこそが歯科医院での食事指導のキーポイントになるのではないかと

感じております。

 

 

ここで、日本歯科学会が行った調査の中の【子どもの食事の心配事】を見てみると

実際に上位に挙がっている心配事は

 

歯科医師

① 良く噛まない

② 食べるのに時間がかかる

③ 偏食する

④ お菓子やジュースばかりで食事が食べられない

 

保護者

① 偏食をする

② むら食い

③ 遊び食べ

④ テレビを見ながら食べる

という結果が出ています。

 

 

歯科医師・保護者で心配事の違いとしては、歯科医師は食事(正しい咀嚼を行うこと・

規則正しい生活)が口腔の成長発達を促進させ、歯科疾患予防に繋がるということに

着目しています。

 

一方で保護者は、子供の栄養面や好き嫌いがあることでの社会的側面を心配している

という着目点の違いに気が付きます。

 

この点から歯科医院での食育のあり方を考察していくと、

歯科医師が重要視している

『歯科疾患予防に口腔機能向上が必要であり、そのためには口腔機能の発育を促す

”良く噛むこと”が重要であること』

 

保護者が心配している

『成長期における栄養面での心配や食事におけるマナーなどを食指導の切り口にする』

 

といったテーマが浮かび上がってくるようです。

 

保護者の悩みに寄り添いつつ、歯科医療従事者ならではの専門性を加え

口腔育成・咀嚼機能の発達のための具体的なアドバイスを行うことが

求められるのではないかと考えます。

 

次回へ続く。

 

参照:日本歯科医学会重点研究「子どもの食の問題に関する調査」報告書 

平成27年1月  日本歯科医学会重点研究委員会

https://www.jads.jp/activity/search/shokunomondai_report.pdf
 

宗田 香織

1996年 東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校を卒業後一般歯科や審美・矯正歯科などにて勤務。

2000年 Dr岡本・Dr竹内よりスウェーデン歯周病学を学び、歯周治療・メンテナンス・

インプラント予防管理を中心に歯科クリニックに勤務。

2018年10月よりこども成育インストラクター〈食専科〉アンバサダーとしても活動中。

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