こどもの「今」と親子関係の傾向を把握するWebアプリ「オヤトコ診断」の開発ストーリー第一弾では、
「生みの親」である協会理事 沢井佳子先生のお話を伺いました。
第1回:「こどもの発達」をどう見分けるのか はこちらからお読みください。
第2回:「こどもの能力を見分ける7つの領域とは」 はこちらからお読みください。
第3回:こどもの能力の特徴をどのように見分けるのか はこちらからお読みください。
第4回:こどもの能力を伸ばすための「おやとこ診断」の活用法とは はこちらからお読みください。
第二弾は、開発者の一人である協会理事 大塚千夏子編をお届けします。
今回の連載では、沢井先生との出会いから日本こども成育協会の設立に至るまでのプロセス、
「オヤトコ診断」開発の試行錯誤の日々をご紹介していきます。
―偶然は必然だった 沢井佳子先生との出会い
大塚:日本こども成育協会の母体である株式会社Patataは、保育園、幼稚園、
こども園の空間のデザイン、設計、施工を手がけています。
そして、Patataの創設時期に出会ったのが、沢井佳子先生でした。
知り合いを介してご紹介いただいたのですが、空間づくりの監修を「こどもの認知発達」の観点から
お願いしたいとお話したところ、とても関心を持っていただきました。
私たちは保育業界では後発企業でしたが、沢井先生という強力な味方を得ることで、
こどもの成育状況に配慮したデザイン設計という強みを持てたこと、
さらには「子ども子育て支援法」の施行や企業主導型保育事業への助成制度の開始など、
時代的な追い風も吹いたことから、案件のご依頼も順調に増加していきました。
一方で、保育事業に様々な思惑が流れ込んできたという印象もあり、
保育事業者やデザインする私たち大人が考える「保育空間」を作り続けていくことは、
「私たちがPatataを立ち上げた当初の思いと合致しているのか?」という疑問も浮かんできたのです。
「こどもたちがのびのびと成長できる環境をつくる」という目的に照らし合わせたとき、
空間をつくるというハード面だけでよいのか。
保育の中身や子育ての質を高めることに貢献できるような、ソフト面での事業を
考える必要はないのだろうかという思いが生まれたのです。
しかしながら、その思いは漠然としていてどのように事業化していくかといった
アイデアや構想はまだ何もありませんでした。
そうしたときにいつも思い出すのは、沢井先生との初顔合わせの時のことです。
当時私は沢井先生に、「こどものための空間を考える際に、
どのような年齢的な配慮が必要なのでしょうか」という質問をしました。
それに対する沢井先生からの答えは、「何歳だからこうしなければならない、
と考えるといろいろと間違えることがある」と、とても意外なものだったのです。
「何歳なのにあれができない、ここが足りない」と育児書やインターネットの情報、
さらにはほかのお子さんとの比較だけにとらわれてしまっているお母さん方がとても多い。
しかし、ヒト(特に幼少期)には発達の段階があり、そのステップは一段一段と進んでいくものであること、
そして、その子なりの進む速度があることが分かれば、月齢年齢にとらわれずに落ち着いて観察できるようになる。
「これが出来たから、つぎはこれね。」と見通しをもって見守っていくことが大切であり、その構えがあれば、
お母さん方ももっと楽な気持ちで子育てを楽しめるはず。
そういったお話を沢井先生は2時間近くかけて熱心に講義くださいました。
「こうした沢井先生の言葉を子育ての現場の人たちに届けることができたら」
それを事業化することで、「子育てに前向きな社会を創る」という
私たちの真の目的に近づくことができるのではないか―
それが日本こども成育協会設立のきっかけとなりました。
次回へ続く。