Webアプリ「オヤトコ診断」の開発ストーリー第二弾では、開発者の一人である
協会理事 大塚千夏子のストーリーをご紹介しています。
前回は、もはや当協会の守護神とも言える沢井佳子先生との出会い、
そして日本こども成育協会設立のきっかけをお話いたしました。
偶然は必然だった 沢井佳子先生との出会い―「オヤトコ診断」開発ストーリー(5) はこちら
今回は、「オヤトコ診断」をはじめとする当協会のコンテンツ、すべてに共通している
「こどもを観察する力」に着目した理由についてお伝えします。
―観察をすることなしに、問題を大きくとらえてしまう
大塚:沢井佳子先生に保育園の空間デザインの監修をお願いしはじめた当初、
月に1回先生をお招きして勉強会をしていました。
そのときに沢井先生がお話くださることが非常に興味深くて、毎回とても楽しみにしていました。
特に私の中で衝撃を受けたのは、前回もお伝えした「ヒト(特に幼少期)には発達の段階があり、
そのステップは一段一段と進んでいくものであること、そして、その子なりの進む速度があることが分かれば、
月齢年齢にとらわれずにこどもの育ちを落ち着いて観察できるようになる」というお話でした。
この発達のステップは一方向ではあるのですが、お子さんによってそれぞれのステップに
とどまっている期間は一定ではありません。
たとえば、なかなか発語がなかったお子さんが、ある日突然いろいろなことを話し始めるということがあります。
沈黙の期間があって、ある日突然ガクッと階段を登っていくのがこどもの発達の仕方だというお話は、
目からうろこが落ちるような思いがしました。
さらに、お子さんの成長を的確に観察することがいかに重要であるかについても、
沢井先生はお話くださいました。
たとえば、親御さんは「発語がない」ことを心配されますが、名前を呼んでみて振り返ったり、
うなずいたりするのであればそのお子さんはちゃんと聞こえています。
一方で、名前を呼んでも振り返らない、指さししたほうを見なかったりする場合は、
何らかのケアが必要であると考えられます。
そうした際に、だいたいの親御さんは「この子は発達障害なのではないか」と心配されます。
しかしながらある事例では、沢井先生がよくよくお子さんの様子を観察したり、働きかけをしてみると、
そのお子さんは聴力が弱い可能性があることがわかりました。
物理的に聴こえていなかっただけなので、補聴器をつけはじめたところ、お話もするようになり、
お母さんとも会話ができるようになったそうです。
このケースは少し極端な例になりますが、問題の一面しか見えていないがゆえに誤解が生じてしまうことが少なからずある、
ということに私自身も気づくことのできたお話でした。
お子さんを観察する方法はいろいろありますが、いろいろな角度から観察を試みる前に、
親御さんはわが子を心配するがあまり、問題を大きくとらえて心を痛めてしまいます。
だからこそ、こうした「こどもを観察する力」の大切さをもっと世に広め、
養育者や保育者が正しい観察の知識を持つことが大事なのではないか、
それこそが私たちがやるべきことではないか、という思いに至るようになりました。
次回へ続く。