昨年4月より、「こども成育インストラクター講座<食専科>」のディレクターであり、「健康食育」の講座も担当している隅弘子先生が、月刊誌『こどもの栄養』(公益財団法人 児童育成協会発行)にて、連載をしています。
児童育成協会様にご快諾いただき、連載の内容を当協会でのブログでも公開することになりました。「こども成育インストラクター講座<食専科>」をベースとした連載ですので、本講座のエッセンスがギュッと詰まっています。
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げんき食実践の3つのポイント③-1 -どんどん出すためのおけいこ
~食べものの入り口からみつめなおす~【1回目】はこちら
2回目は、「どんどん出す」ために必要な「咀嚼(そしゃく)」のメリットついてお話します。
◆よくかむことが「げんき」と、しっかり出せるからだを作る
「そしゃく」をするとなぜ「どんどん出す」ことができるのでしょうか?
「もぐもぐ」には多くのメリットがあります。そのうち3つのメリットを紹介します。
メリット①:唾液を出すことが力となる
第一に、唾液には食べものを消化吸収するために必要な消化酵素が含まれています。
とくに、お米などに含まれるでんぷんを消化するための酵素(アミラーゼ)が含まれるため、食べものと唾液をよく混ぜ合わせる食べ方はとても有効です。
まだ発達段階である幼児のからだには消化に負担をかけない食事の実践が不可欠です。
唾液は適切な水分でもあり、食べものが食道を通過しやすくさせる役割を果たします。
とはいえ、幼児期の唾液腺は大人ほど発達していません。
食事中に水分の摂取を補う目的として白湯やお茶を用意してあげる必要がありますが、過度に水分で流し込む食べ方になっていないかは注視したいところです。
また、「唾液を出す力はむし歯になりにくさの習慣付け」としても大切です。
お母さん方は「しっかりと歯磨きをしないとむし歯になってしまう」と頑張りがち。
けれど子どもはその必死な形相を恐がり、なかなかやらせてくれないといった悩みも多いですよね。
歯磨きも大事ですが、そもそもむし歯になりやすい口腔環境のリスクを減らすという視点からも唾液の殺菌力も味方につけたいものです。
メリット②:あごを鍛える体操で感覚の刺激を活発に
「そしゃく」をするとあごが動きます。
あごをよく動かす運動につながっていますね。
あごをよく動かせるということは、食感の変化を感じ取れるようになることにもつながります。
最近は、よく編むということ、ごっくんと飲み込む力が弱い子どもが多いと言われています。
野菜は軟らかめに調理してしまう離乳食の経験をそのまま引きずって、軟らかい形態の食事が続いていることも要因かもしれません。
あごを鍛えるにはよく噛むことを習慣付けるのが一番です。
ひとくち30回噛もうという食育の支援の方法があります。
その場合は、まだ30まで数を数えられないケースも多いことから「もしもし かめよ かめさんよ~」ではじまる童謡を、1番歌いながら「そしゃく」する楽しさを鍛えるのもいいでしょう。
メリット③:食べたものを「げんき」にかけるポイントにつなげる支援を
口で食べたものを「そしゃく」すると、この刺激が肛門まで伝わります。
長いくねくねした1本の管である消化器官全体に伝わるため、胃腸を動かすスイッチを点灯させる行動へと続きます。
もぐもぐする習慣が身に付くほど胃腸の力もぐんぐん育つのです。
食べたものをより心と体の材料として使いやすく、かつ胃に続く腸の力も連携して動きます。
まさにもぐもぐする=胃腸(筋)のエクササイズですね。
また、免疫力アップというのは、免疫細胞をしっかり働かせることができる環境づくりを指します。
病気に罹りにくいというのは、人がもつ免疫細胞の力の発揮度によります。
とくに人の免疫細胞の約6割は腸で作られるので、いかに腸の状況を健やかに保つかが重要なのです。
さらに、食べた物が腸に到達した際により吸収しやすい状態かどうかが便秘を解消させるポイントにもなります。
腸にいい食べものを選択するという対処以外に、排便しにくい食事の仕方になっていないか見直してみてください。
よく噛まないで飲み込んだ食べものは、胃の消化機能の負担につながり、腸内で吸収できるサイズまで消化できなかったものは栄養として使われず、腸管を傷つけながら肛門に達して、排便が困難になります。
げんき食実践の3つのポイント③-1 -どんどん出すためのおけいこ
~食べものの入り口からみつめなおす~【3回目】につづく