こんにちは。日本こども成育協会の「中の人」です。
最近読んだ本で、とても印象的だった一文があります。
児童文学作家で、『魔女の宅急便』の原作者である角野栄子さんのエッセイにあった一文です。
本を読む子どもが少なくなったときく。
それはきっと素敵に本を読んでくれる大人が少なくなったということかもしれない。
「作家」と「魔女」の集まっちゃった思い出 角川文庫 p.36
そう危機感を感じていらっしゃるからか、2023年に開館した『魔女の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)』では、
角野さん自らが読み聞かせをするイベントなども開催され、とても人気を博しているようです。
昨今、生成AI技術の発達によって、YouTubeなどでも生成AIでの音声による
絵本の読み聞かせチャンネルがどんどん生まれているという話を耳にします。
また、絵本や物語そのものも、生成AIにすべてお任せで作成できる時代。
ますます、素敵に本を読んでくれる、あるいは素敵な本そのものに触れる機会が減っていくのではないかと
少し危惧されるような状況です。
先日、ボランティアで子どもたちに読み聞かせをしている女性のお話を伺いました。
ボランティアをはじめられたときに、読み聞かせにもいくつかルールがあると教わったそうですが
今はそのルールは最低限にされているとのこと。
それよりも、子どもたちとの言葉や感情のキャッチボールを大切にしているというお話でした。
まさに、素敵に本を読んでくれる大人です。

昨年の秋に理事の大塚千夏子が参加した子ども学会議では、絵本がテーマでした。
大塚のレポートからも、絵本を作り上げる過程での、子どもの視点に立った試行錯誤の様子が伝わってきます。
また、協会理事の沢井佳子先生が監修している知育・サイエンス映像コンテンツ「くらしテクノ」は
株式会社一条工務店様の公式YouTubeチャンネルの子ども向けコンテンツです。
子どもの心理発達の視点から沢井先生が監修をおこない、かなりの手間暇をかけて制作されています。
単に時間や手間をかけるからよいというわけではなく、子ども側に立った設計やデザインがされているのか
という点が大事なのだと思います。
冒頭の角野さんの言葉をお借りすれば
子どもたちにとって「素敵」であろうとする大人たちの努力です。
本に限らず、子どもたちがこうした素敵な経験ができる機会の創出。
それこそが、大人たちに求められる仕事ではないかと感じました。