こんにちは。歯科衛生士・子ども成育インストラクターの宗田香織です。
前回に引き続き、甘いもの好きの2つ目の理由と「甘くて柔らかいもの」が好まれるわけをお話します。
お口徹底解説〈Part8-1〉 口腔の基礎知識:子どもが甘いものを食べたがる理由
本能が求める味=エネルギーの高さ
甘みを好む理由は味覚以外にもあります。
それがエネルギーの高さです。
全身的な成長発達著しい乳幼児期は身体の大きさの比率で考えると、
おとな以上にたくさんのエネルギー量を必要とします。
ですが、子どもの胃腸は小さく一度に摂取できる量が少ないので
一日に必要なエネルギーを3食だけでは摂り切れないため間食が必須なのです。
乳児にとってのおやつは、「ご褒美タイム」ではなく「1日に必要な食事のひとつ」なのです。
食べ物の中で甘味のあるものはエネルギーが高く、身体に吸収しやすいので
人が本能的に好きになりやすいのです。
ですから、甘いものを必要以上に規制したり怒ったりせず
摂り方の工夫をしてみてください。
◎お菓子などの甘いものはたまに食べる
◎フルーツなどであれば食後のデザートで食べる
◎飴やジュースなどダラダラ舐めたり飲み続けたりしない
など時間を決めて食べることが大切です。
また、甘いものを必要以上に欲しがらないようにするポイントは
3食の食事を十分摂ること。
栄養バランスやエネルギー量に加えて心理的な満足度も高くなるので
◎朝ごはんもしっかり食べる
◎主食になる炭水化物(糖質)も抜かないようにする
◎噛む回数が増える調理方法やメニューにする
など基礎となる食事の見直しも必要です。
逆に言うと、間食でスイーツ要素の高いものを食べる習慣ができてしまうと
それでお腹いっぱいになってしまいます。
3食の食事量が減り、本来必要な栄養摂取の妨げになってしまう懸念があるので
栄養摂取・エネルギー摂取の基礎となるところは朝昼晩の食事となります。
おやつ・間食はあくまでも補完食であるという配慮が必要です。
甘くて柔らかいものは最上級の美味しさ?
よくテレビの食レポなどで
「甘くて美味しい~歯がなくても食べられる~」「口に入れた瞬間、溶けちゃった~」
と美味しさを表現しているのを聞いたことありませんか?
甘いもの・柔らかいもの・噛まなくて良いものが美味しいもの…
と刷り込まれているような感じも否めません。
良く噛んで食べることが好きな私としては、少し寂しい気持ちになってしまうことがあります。
瞬間的に甘味を感じるものは柔らかいものが多いので、甘味嗜好が強くなると
必然的に噛まなくても食べられる食習慣に偏ってしまいます。
「美味しさの一つ」「特別な日のお楽しみ」としては良いのですが
噛まなくてもよい食事を続けてしまうと咀嚼回数が減ってしまいます。
その結果、口の動きが少なくなり、食材がいつまでも口の中に残ったり
唾液分泌量が減ったりしてむし歯・歯周病のリスクが上がってしまいます。
いろいろな栄養素を摂取しないといけない雑食性の人の食事としては
多くの食材を食べることは栄養学的にも求められます。
甘味ひとつとっても、砂糖のように口に入れた瞬間感じる甘味だけではなく
米・芋類などのように、よく噛んで唾液と混ざることでじわじわと感じる甘みもあります。
多様な甘みを感じる食習慣にすることも、味覚形成の基礎を作る
幼児期の食事において重要です。
また、「美味しさ」を感じる要素は味以外にもたくさんあります。
食感・舌ざわり・鼻をぬける香りと共に感じる豊かな味覚は
脳の成長や食の表現力にも繋がります。
乳幼児期からよく噛む食習慣ができていると、味覚形成だけでなく
・むし歯や歯周病予防
・よい歯並び
・脳の活性化
・集中力が高まる
・正しい呼吸
・姿勢が整う
・消化の胃腸の負担を軽減させる
などの全身的にも好循環が生まれます。
美味しさを十分に味わうことは、単に味だけにとどまらないのです。
そのほかにも、「おいしさ」は5味以外の要素との組み合わせでも
感じ方が違って現れます。
例えば、硬い・柔らかい・熱い・ぬるい・冷たい・滑らか・ざらざらしている
などの食感や、その時の体調・誰とどんな環境(雰囲気)で食べるか
などでも味の感じ方に違いがでます。
もし今お子さんの好き嫌いで悩んでいるママやパパがいたら
「自分の料理が美味しく調理できなかったから」と自分を責めずに
子どもの時期には好き嫌いがあって当然。
むしろ成長の証なのだということを思い出してみてください。
そのうえで、おとなが食を楽しみ良く噛んで食べる様子を
日々の食卓でお子さんに見せてあげてください。
そうしたママやパパの様子を見ること、真似すること、
さまざまな食の体験することを通して、子どもの味覚は成長発達を遂げるのです。
今回は、「なぜ人は甘いものが好きなのか?」という謎に迫ってみました。
甘味は生まれながらにして好む味がゆえに甘味嗜好に偏りやすいということを
知っていただけたかと思います。
今までとは少し角度を変えて、人の本能的な特性をむし歯予防のポイントに
活用してみるのも良いのではないでしょうか。
参考文献:
厚生労働省 「食を通じた子どもの健全育成(-いわゆる「食育」の視点から-)のあり方に関する検討会」報告書について
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宗田 香織
1996年 東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校を卒業後一般歯科や審美・矯正歯科などにて勤務。
2000年 Dr岡本・Dr竹内よりスウェーデン歯周病学を学び、歯周治療・メンテナンス・
インプラント予防管理を中心に歯科クリニックに勤務。
2018年10月よりこども成育インストラクター〈食専科〉アンバサダーとしても活動中。