こんにちは、歯科衛生士・こども成育インストラクターの宗田香織です。
歯科クリニックで親御さんからお子さんのお口についてご相談を伺う時
しばしばママやパパが「子どもは大人の小さい版」と表現されることがあります。
確かに「見た目」はそう感じてもおかしくないのかもしれませんが
ヒトの成長発達について紐解いていくと、実は大きさだけの違いではないのです。
例えば、子どもと大人の口の違いを挙げてみると
①大きさ・形(口腔の成長)
②食べ物を取り入れる動き(食物摂取方法や消化機能の発達)
③呼吸法
④歯の有無による歯科疾患のリスク
があります。
今回は、①大きさ・形が違う(口腔の成長)を中心にお話しします。
赤ちゃんの口の中は柔らかい粘膜だけ
生後間もない赤ちゃんの口の中をよく観察したことがありますか。
生まれた時、赤ちゃんの口の中には歯は生えておらず
大人と比べて口の中いっぱいに舌がドンっと大きく広がっているように見えませんか。
頬の内側もプルプルと口の中に張り出していると思います。
柔らかい組織である舌・歯肉(歯ぐき)・頬粘膜(ほっぺ)だけで構成され
それが口の中いっぱいに広がっているので、狭くてギュウギュウな状態です。
ここでぜひ試してみていただきたいのですが、口を閉じた状態で、中で舌を動かしてみてください。
大人の口には、舌を縦横無尽に動かすスペースがあると思いますが
この余白が赤ちゃんの口の中にはないのです。
赤ちゃんの口の狭さは、大人との栄養摂取の方法の違いか理由のひとつです。
生後すぐの栄養摂取は、母乳や人工乳によります。
乳首や乳房・哺乳瓶の吸い口をしっかりとくわえて密着させます。
そうして口内と母乳(吸い口)の密閉状態が作られ、圧迫することで
母乳や人工乳を吸い出し飲む(搾乳する)ことができるのです。
余白があるとこの密閉状態ができないため、赤ちゃんの吸引力だけでは
母乳や人工乳を搾乳することが難しいのです。
また歯があると、密着させた時にお母さんの乳首が傷ついたり
哺乳瓶の吸い口がちぎれてしまったりして哺乳に影響します。
これが、赤ちゃんの口の中が狭くて歯がない理由なのです。
歯があることで口腔内に「高さ」が生まれる!!
生後6~7ヶ月の離乳期頃を目安に歯がはえてきます。
歯の役割のひとつは、皆さんご存知の通り「食材を噛んで細かくする」ですね、
しかし、歯の役割はそれだけではないのです。
顔の形が赤ちゃんや子どもでは丸型なのに対して、大人は縦長というように
口の形や容積にも違いがあるのです。
これには、実は歯の有無が関係しているのです。
『こども成育講座』の中でも触れますが、スキャモンの発達発育曲線を元に
子どもの口腔の成長発達を見てみましょう。
頭蓋骨に付随する上顎(じょうがく・うわあご)は、神経型といわれる
脳や脊髄・視覚器などの神経系や感覚器系の成長の時期である出生時から6歳頃まで一気に進みます。
脳や頭の骨の容積も増加し、それにより上顎も大きくなり上の歯が生えるスペースの確保ができます。
また下顎(かがく・したあご)は、一般型の成長を遂げます。
一般型とは、身長体重・筋肉・骨格の成長を示したもので、生後すぐから
3~4歳頃(前半)と12歳頃の思春期(後半)と二段階で大きな成長の時期を迎えます。
このことから、口腔領域において上顎は脳の発達に伴い生後すぐ急速に発達し
下顎はそれを追うように段階を経て成長することが分かります。
見た目の変化としては、頭が大きく丸い顔の形から、下顎が成長するとともに
下縦方向へ成長が進み、顔が楕円形に変化していきます。
顔が縦方向に大きくなることで、口腔内にも上下のスペース(高さ)が作られます。
おっぱいや哺乳瓶で哺乳をしたり、おもちゃなどのくわえ遊びで口を動かすことで
歯ぐきに刺激が加わり、歯ぐきの厚み(高さ)も増します。
これは、骨(歯槽骨)中に控えている歯が出てくる準備をしているのです。
そして歯が生えることで、さらに歯ぐきの高さが増し、それにより
口腔内の高さも生まれるというわけなのです。
次回へ続く。
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宗田 香織
1996年 東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校を卒業後一般歯科や審美・矯正歯科などにて勤務。
2000年 Dr岡本・Dr竹内よりスウェーデン歯周病学を学び、歯周治療・メンテナンス・
インプラント予防管理を中心に歯科クリニックに勤務。
2018年10月よりこども成育インストラクター〈食専科〉アンバサダーとしても活動中。