お口徹底解説〈Part6-2〉 口腔の基礎知識:『マグトレ』をお口の発達から考えてみよう

こんにちは、歯科衛生士・こども成育インストラクターの宗田香織です。

前回は、『飲む』という動作について赤ちゃんと、乳幼児から成人との違いなどをお話しました。

 

お口徹底解説〈Part6-1〉 口腔の基礎知識:水分補給の盲点『飲む』という動作に注目してみよう

 

今回は、質問をいただくことの多い『マグトレ』について、口腔の発達の観点から

解説していきたいと思います。

 

外出先などで、乳幼児がストローで飲み物を飲んでいる様子を時折目にします。

 

まだ吸啜反射が残っていてストロー飲みには適さない月齢であったり

口唇の動きが不十分で吸引力がなく、水分を摂取することが難しいために

嫌がったり、むせたりしていることもあります。

 

まず、口腔の成長発達と共に、お子さんができる動作は変わってくるということを

お伝えしたいと思います。

 

おっぱいやミルクを飲む

スプーンからすする

大人がコップを持ってサポートしながら、ゆっくり飲めるようになる

お子さん自身でコップを持ち、飲めるようなる

 

このような順番で『飲む』動作の発達は進んでいきます。

 

9~11ヶ月頃を目安にコップで上手に飲めるようになり

その後口唇の力が強くなってからストロー飲みができるようになるのです。

 

入園前の準備でマグトレを開始して、「ストローで飲めないと、コップでも飲めなくなるのでは?」と

焦ってしまうこともあるようですが、心配しなくても大丈夫です。

 

乳幼児用のマグトレ用コップ(ストローマグ・スパウト)を使えないといけないということではないので

お口の成長発達を促すために日常的に使用するというより

子育て中のストレス軽減や、外出時など便利グッズとして上手に活用することが良いと思います。

 

また、『マグトレ』のほかによく挙がる相談例として『ペットボトルの「くわえ飲み」に困っている』

という内容があります。

 

子ども、大人に関係なく、ご家族から「ペットボトルの中に食べかすが入ってしまう」

「口の中のばい菌が入って、食中毒の原因になりそうで怖い」など心配の声が多いです。

 

大人の飲む動作(成人嚥下)では、上唇を閉じて水分の入ってくるタイミングや量

温度、粘性などを感知しながら、流し入れる量や速度を調整します。

 

これは、「むせ」や「火傷の防止」など大事な防衛機能です。

ペットボトルのくわえ飲みと同様に、唇をコップに付けず大きく口を開いたまま

飲んでいる場合もむせの心配があります。

 

よく言われる「猫舌」も、上唇が上手く閉じられず、熱い飲み物が直接舌にあたるので

起こる現象です。

 

 

さらに、飲む動作を含め日常の動作で唇の機能が発達しないと、上下口唇が上手く

閉じられず“お口ぽかん”の状態になります。

 

これは、出っ歯など歯並びの問題や、口呼吸による虫歯や歯周病のリスクが上がるなど

様々な口腔のトラブルにも繋がります。

これまでお話してきたように、『飲む』動作も成長過程において、段階を経て発達していきます。

 

その成長発達を促し元気なお口を育てることは、単に食事から栄養素を摂取し

生命を維持することにとどまりません。

 

飲む動作には様々な身体の動きを必要としますが、今回は特に『口輪筋』という

唇の周りの筋肉の成長発達に繋がるエクササイズを最後にご紹介したいと思います。

 

【口輪筋を鍛えるエクササイズ】

お口をすぼめて「うー」→お口を横にひいて「いー」

この動作を

・数回繰り返す

・5秒ずつゆっくり行う

・大人が見本になる

※赤ちゃんでも大人がやっているのをジーと見つめ、数秒後にお口をもぞもぞ動かします。

最初はそこからスタートでOKです。

 

大切なことは、「正しく」ではなく「楽しく」行うことです。

 

お子さんだけでなく、ぜひ大人の皆さんも挑戦してみてくださいね!
 

宗田 香織

1996年 東京都歯科医師会附属歯科衛生士専門学校を卒業後一般歯科や審美・矯正歯科などにて勤務。

2000年 Dr岡本・Dr竹内よりスウェーデン歯周病学を学び、歯周治療・メンテナンス・

インプラント予防管理を中心に歯科クリニックに勤務。

2018年10月よりこども成育インストラクター〈食専科〉アンバサダーとしても活動中。

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