そろそろ卒園・そして進級を迎える年度末です。
保育内容などの発表をいかにするか、工夫をされている頃でしょう。
年度はじめに比べ、子どもたちが成長したと感じることもたくさんありますね。
そうした成長の一つが「食べもの」の変化ではないでしょうか。
そこで今回は、「食物アレルギーを持つお子さんの変化と成長」について
お伝えしたいと思います。
アレルギーを持つ子どもの給食提供。その根拠となる生活管理指導表の更新を
食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017(*1)では、
乳幼児期に発症する鶏卵、牛乳、小麦、大豆は年齢とともに食べられるようになる
傾向が強く、一般的に3歳までに約50%、6歳までに60-70%が食べられるようになる。
とあります。
消化機能の発達や成長、家庭で少しずつ食べられる量を増やす治療を重ねることで
除去食を提供していたお子さんも、この先友達と一緒の給食を食べられるように
なるかもしれません。
進級する園児については、提供する給食について保護者と情報共有する必要があります。
「生活管理指導表」を再度、医師に記入していただくよう依頼してもよいでしょう。
保護者との給食提供に関する面談での資料とし、1年に1回以上は保護者と
確認すると良いでしょう。
食べられるようになる前から心がけたい声がけ
子どもが完全除去食を食べている時には、「その食べもの自体は悪者ではない」
ということは大人から繰り返し伝えたいものです。
特定の食べ物を食べたことによって、かゆかったり、呼吸が苦しくなったりと
嫌な経験を体感しているお子さんもいらっしゃることと思います。
しかしながら、食べものとは人間にとってはエネルギーや栄養を
与えてくれるものであり、「元気に大きくなる」ために必要なものです。
だからこそ、伝え方がとても大切です。
「〇〇を食べたら、かゆくなるから食べないようにね」
「▲▲は絶対食べないでね」
このような声がけではネガティブなイメージが先行となり、
食べることが「怖い」ということだけが膨らんでしまいがちですね。
例えば、これらの言葉の後に
「体が大きくなったら食べられるようになるからね」
といった励ましを常に添えてあげることが大切です。
大きくなるためにも、目の前の給食を食べようねといった支援を
続けていただきたいと思います。
本当に食べていいの?と聞かれたら安心の声がけを
除去解除が保護者と園側で確認できたら、保護者の方からお子さんへ
ぜひ事前に声がけしていただくことをお願いしてください。
”今まで園では食べてはダメと言われていた”
”安全な給食提供のために、自分だけ器の色が違った給食だった”
”食べるスペースに間隔が空いていた食卓だった”
上記のような食事の環境だった子どもが、除去解除によってこれまでと
食事の環境が変わることに対して、不安を感じるかもしれません。
事前に保護者の方から
「明日からお友達と同じ給食を食べていいよ」
「楽しみだね」
と言った声がけをしておくと安心するのではないでしょうか。
また、給食前に「先生、これ、本当に食べていいの?」と質問されたら、
「お母さん(お父さん)がいいと言っていたよ。だから食べていいんだよ」と
二重の安心感を与えていくことも良いでしょう。
寛解した、症状がよくなってきたからといって、その食べ物が好きかどうかは分かりません。
アレルギーではないのに食べない場合は、他のお子さん同様に
好き嫌いの克服のアプローチをして、食べられるように支援してあげましょう。
*1 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017 食物アレルギーの予後
https://www.foodallergy.jp/wp-content/themes/foodallergy/pdf/nutritionalmanual2017.pdf
参考:保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表
https://www.mhlw.go.jp/content/000512752.pdf
(参考様式) ※「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(2019年改訂版)
隅弘子 一般社団法人日本こども成育協会食専科ディレクター・管理栄養士
【略歴】
mamaful(子育てが楽しめる支援をいっぱいに)を屋号に乳幼児を育てる保護者支援を中心に活動している。
都内子育て支援施設内での食事相談・離乳食教室の開催をはじめとして各種講座の講演や企画を行う。
子育て支援サイトや保育士求人サイト内でのコラム記事協力を行う。