「食べる」ということは体を大きくしていくのみならず、生物である「ヒト」から心豊かな「人間」になる心を健やかに育むことも兼ねています。日々の「食べる」ということを、より大切な生活習慣と考えていただくための親子のあり方、前回からの続きをお伝えします。
◆知育も兼ねた「食事」タイムで豊かな食事の経験を!
私が離乳食・幼児食講座などお母さん方へ話す機会によく聞くのが「しょくじ」についてです。
親子の愛着関係をより深めたい幼児期は特に「食事」を活用しましょう。
作ったものは「全部食べて欲しい!=栄養を与えなければ!」と想いが強すぎる場合はもしかしたら「食餌」になっていませんか?
人間の食べる「食事」は、ただ空腹を満たし、栄養を与えるだけではありません。
「食べる、食べさせる」だけではなく日々の食事タイムで「食べものについての理解」を多方面から深めていきましょう。
大好きな人、尊敬をしている人からの学びはとても心地よいものです。
日々の食所の時間を通して「できる・わかること」という楽しい学びの機会を増やしていきましょう。
◆やってみよう! 「食餌」にしないコミュニケーションづくり
食事を通して得たい最大の経験は「食べることが楽しい」と思う心を育てることです。
「何のために食べるのでしょう?」に対する答えは「栄養を得るため」と構えすぎないで、「心身が健やかに育つこどもの食事」としてみましょう。
<言葉がけ>(言語の発達)
「いっしょにたべるとおいしいね」「まるいね」「あかいね」。
「いちばんおいしい〇〇、だれが食べる?」「あまいね」「ひとつどうぞ」。
「ほっぺが落ちそうだね(頬を実際にさわってあげると良い)」。
① 表情をつくる練習(表情筋・表現の発達)
もぐもぐしている間は食べることに集中します。「ゴックン」と飲み込んだのを確認したら、「おいしかったね!」と「ゴックンスマイル」をします。
「楽しい、うれしい」「一緒に過ごしている安心感」ということのサインを、顔の表情「笑顔」で伝えます。
② スキンシップも大切な要素
「ごちそうさまでした!」の後に抱っこして、頭や頬などでスキンシップを。
③ 食事のおけいこは「まねっこ訓令」
言葉を優先するより、動作を優先にしましょう。
ジェスチャーゲームのように大きくゆっくり動くことです。
優しく歌いながら示してみたり、擬態音なども活用し、リズムよく語りかけましょう。
◆愛着形成がこどもの心の発達の土台、大好きな人が学びの対象に
おとなはとかく生活時間に追われています。
また、ライフスタイルの多様性により食事時間が不規則になったり、一緒に食べる大人たちが、そもそもおいしそうに食事をしていないケースが増えています。
食事自体を我慢していたり、食べながら何かをしていたり、テレビの方へ目線がいってしまっていたりしていませんか?
一緒に毎日生活している親の方々は、こどもには日々真似される対象として見られています。
大好きなお母さんがおいしそうに食べているシーンを、あまりみていないこどもたちが増えているように感じます。
お母さんはこどものための食事作り、食事の介助で精いっぱいでしょう。
しかし、目の前でお母さんが、おいしそうに食べることが、立派は見本となります。
こどもを「食べたいな」「楽しいな」といった気持を育むたくさんの機会が、「一緒に囲む食卓」にはあふれています。
少々耳の痛い内容化もしれませんが「子は親の鏡」「親の背中を見て育つ」という一面もあることを忘れずに、大人自身が食べることを楽しんでほしいと思います。
◆「遊びから学ぶ食べること」にも積極的にチャレンジしてみましょう
日々の生活からたくさんのことを学んでいく乳幼児期は、食事の中だけではなく、いろいろな遊びからも、食についての多くの学びを深めていくことができます。
遊びの中で、コミュニケーションの三項関係を活かし、とくに食に悩んでいる場合は、いったん別の視点から挑戦することが有効です。
*パペット人形などをつかって、お口で食べものを上手に食べる流れを見せましょう。
*絵本からの疑似体験や類似体験を増やしましょう。