げんきをつくる食卓
「食べることが好き」を育む3つの力と3つの関係
―『こどもの栄養』平成30年6月号 第750号-
「食べる」ということは体を大きくしていくのみならず、生物である「ヒト」から心豊かな「人間」になる心を健やかに育むことも兼ねています。
今回は日々の「食べる」ということを、より大切な生活習慣と考えていただくための親子のあり方についてです。
◆こどもはどうやって「できる」「できた」を獲得しているのでしょう?
スプーンをお口の前に近づけ、下唇にそっと触れるように…と離乳食から開始した「食事というおけいこ」、日々積み重ねた練習の成果が、ひとりでスプーンを持って食べたり、おはしをつかって食べられるようになるのです。
こどもは成長に応じて、「食べる」ための動作や食べられる食材が増えるなど、どんどん変化していきます。このような能力はどのように獲得していくのでしょうか。
いつも大人が声がけしている言葉や指示は、すべて理解できているのでしょうか?
乳幼児期のこどもは、大人が思っている通りに言葉で理解し、行動するのはまだ難しいでしょう。
◆生まれつき備わっている3つの力が「できる」「できた」を生む
ヒトに生まれつき備わっている力
① 人の顔に注意をむける
② 人が注目するものに注意をむける
③ 人の動作や声を模倣(もほう)する
これら3つの力は、コミュニケーション時に発揮する力ともいえます。
①は、「自分の面倒を見てくれる人」を探し出す力。
赤ちゃんの欲求を満たしてくれる人に向けて注意を向ける力。
その証拠にお母さんとその他の大人の違いをしっかり分けていますよね。
②は、①でいう注意をむけている人が持っているものや、指差す方向を見るといった行動を指します。
「〇〇ちゃん、みてみて! あれはね…」といったような言葉がけでこどもがその方向を見るのはこの力によるものです。
③は、単純に真似をするということです。
注意をむけた人の動きや、発した声を真似する力です。
幼児期までは、この3つの力を発揮する対象はお母さんをはじめとする養育者です。
この「こども×養育者×対象物」という3つの関係性を「コミュニケーションにおける3つの関係(三項関係)」としてみましょう。
この3つの関係を食事という行為にあてはめてみると下記(*)のようになります。
このコミュニケーションの回数が増えるほど親子の愛着形成の機会がさらに高まるのです。
※養育者とは、こどもの周囲にいて世話をする人を指します。
*食事という行為*は
①常にコミュニケーションをとっている人の顔に注意する。
②その人が興味を持って見ている食べものに注意をむける。
③その人が美味しそうに食べている動作や表現の真似をする。
=食事時間も愛着形成の場となっている!!