ヒトの発達とは、生涯にわたるもの。元々プログラミングされている生まれつきもっているものが巻物のように立ち現れてくるのが、発達のイメージだと沢井先生は説きます。そして、発達の順序は階段を一段一段登るようなもの。階段を一段登り終えたら、次の階段に進み、一段抜かしなどはできないと考えられています。
生涯の発達過程において特にその変化が目覚ましいのが、こども時代です。月齢の違いでも発達の度合いが異なってくるのがこの時期。たとえば、生後1か月後ぐらいの赤ちゃんは目で物を追うことができるようになり、その後1か月程度で物へ向けて、手をさし伸べることができるようになります。
赤ちゃんを見かけると、ついついやってしまう「いないいない ばあっ!」という遊び。この遊びをすると、こどもはキャッキャッとはしゃいで喜んでくれることを私たちは経験的に知っています。
なぜ、こどもたちは喜ぶのか、考えたことがあるでしょうか。
ばあっ!と出た顔が面白いからでしょうか?
発達心理学の観点から説明すると、喜んでいるという状態は一緒でも、その笑いの意味合いがかなり異なってきます。
3か月のこどもは、消えた顔が出たことに反応して笑っているのですが、6~7か月になると、消えた顔が期待通りに出てくることに反応して喜んでいるのです。
どちらも「感覚運動期」という全感覚で自分の周囲にある世界を感じ、動き回ることでその世界と接触していく時期なのですが、同じ段階期にあっても、ものごとの理解の仕方はこのように変化していきます。
発達心理学を通してこどもの行動を観察すると、その行動には意味があること、そして次なる発達に向けた大事なステップであることがわかります。
たとえば、箱からティッシュをすべて取り出してしまうという行動。時に周りの大人たちをイライラさせたり、困らせたりするものですが、感覚運動期にあるこどもにとっては、自分の手で確かめながら、身体を使って世界を知っていくというとても大切なプロセスです。
背景にある理由がわかれば、小悪魔のような行動も天使のおけいこに見えてくる不思議。発達を見守ろうという、温かな気持ちや余裕が生まれてくるものです。
発達心理学を単なる学問の領域にとどめることなく、実際の子育ての現場にいかす。それこそが、沢井先生の願いであり、こども成育インストラクターが目指している活動なのです。