先日、日本こども成育協会は「保育博2019」に参加いたしました。エディケーショナルセミナーのコーナーで、『園と家庭の連携で育む“げんき食”習慣』と題し、理事の大塚千夏子がお話をいたしました。
保育博は今回が第1回の開催で、事前情報もあまりなく、どのような方々が参加されるのか楽しみにしていたのですが、当日会場入りしてみると大盛況!
保育園関係者はもちろん、保育や子育てに関心を持つ多くの方々が参加されていました。
協会のセミナーも63名(保育博事務局報告)の方にご聴講いただきました。
日本こども成育協会では、「食」という切り口から「こどもの心理と発達を観察する知識とスキルを学ぶ」ための講座『こども成育インストラクター〈食専科〉』資格講座を現在展開しています。
今回はその講座の核となっている“げんき食”を軸に園と家庭が連携してこどもの育ちを後押しするポイントをお伝えしました。
まず、“げんき食”を習慣とする目的は3つあります。
一つ目は、こどもが「食べること」に前向きになるということです。
子育て中のお母さま方の食に関するお悩みで、筆頭にあがる「好き嫌い」。
なんとか食べさせようとレシピや調理法を工夫したり、時に怒ったり、なだめたりとあの手この手を尽くすけれど、それでも食べてくれない……。
いつしかお母さま方の眉間にはしわが寄り始めます。
そんな怖い表情をしたお母さまに見られながらの食卓は、当然楽しいものにはなりません。
そうしたお母さまにはまず、「好き嫌い」が生じるのはお子さまが成長・発達しているという喜ばしい証なので、心配する必要はないこと。
そして「好き嫌い」をなくすことよりも、「まずはお子さまが食べることに前向きになるような働きかけこそが大事ですよ」ということをお伝えしています。
二つ目の目的は、食卓での楽しいコミュニケーションが食べる経験を重ねる意欲につながるということです。
「園では食べるのに、家では食べてくれません」というお悩みも多く聞かれます。
それはなぜでしょうか?
理由の一つは、食事をする環境にあるかもしれません。
園では、仲良しのお友だちや先生と楽しくお話をしながら食事をしています。
苦手なものも、お友だちがおいしそうに食べている様子を見れば、自然と手が伸びるのかもしれません。
実際に食行動の研究結果でも他者と食べることの効果として報告されています。
お母さま方にこのことをお伝えすると、必ずいただくのが「こどもと一緒に食事をしていませんでした」というお声です。
日々、家事や仕事で時間に追われているお母さまは、ゆっくりお子さまと食卓を囲むことは難しいでしょう。
毎日、毎食でなくてもいい。
食べものを口に入れてほんの少しだけでも一緒に“もぐもぐ”しながら、「おいしいね」と笑顔でお話をする。
たったそれだけのことでも、大きな違いが生まれます。
お子さまは、おとなが食べている姿を見ながら、食事の楽しさを学んでいくのです。
食べることの見本になることが、実はお母さまやお父さま、こどもたちのまわりにいるおとなの役目なのです。
「げんき食習慣」の三つ目のポイントは、「何を食べるか」よりも「どう食べるか」です。
栄養、カロリー、品数と毎食のお献立に悩まれているお母さまも多くいらっしゃいます。
いずれも大切な要素ではあるのですが、それらを365日、完璧にするのは不可能です。
それよりも、園でもご家庭でも必ずできて、続けられること。
かつ、お子さまの成長・発達にもよい影響を与える「習慣」として、私たちは「もぐもぐエクササイズ」をご提案しています。
「もぐもぐエクササイズ」とは、よく噛む習慣です。
ご飯ひと口を30回以上噛むことで、胃腸もよく働くようになり、最終的なお通じがしっかり出ることにつながっていきます。
とても簡単なことのように思えますが、自分自身を観察してみると噛んでいなかったことに気づくおとなは決して少なくありません。
「もぐもぐエクササイズ」は、こどもだけでなくおとなにとっても大事な習慣であり、ぜひ皆さんで取り組んでほしい「食のお稽古」と言えるものです。
短い時間の中で駆け足ではありましたが、皆さんとても真剣に話に耳を傾けられ、熱心にメモを取っていらっしゃる姿が印象的でした。
セミナー後にもたくさんの方にお声がけをいただき、「げんき食習慣」へ大きな関心を実感できた嬉しいひと時となりました。
これからも、こうした機会を積極的に作りながら広く“げんき食習慣”をお伝えしてまいりたいと思います。
今回の登壇の機会は、保育博のご出展者であるオイシックス・ラ・大地株式会社様のお声がけによって実現いたしました。
末筆になりましたが、あらためて貴重な機会をいただけたことに感謝申し上げます。