生後6ヶ月前後から離乳食が始まると、食事を用意するママとしては「何をどんな風に食べさせたら良いか?」と迷ったり、悩んだりが始まりますね。
先日、歯科健診にいらしたお母さん方から「1歳5ヶ月になるのに、まだ大人と同じものが食べられなくて困っています」「スプーンが上手に使えなくて…」とご相談を受けました。
1歳6ヶ月頃ですと、離乳初期に比べて食べられる食材が増えてくる頃です。
大人の食事と離乳食とをそれぞれ作るのは大変ですし、お仕事や家事で忙しいと、洋服やテーブル回りを派手に汚したり、ダラダラと食事の時間が長くなったりするのは困りますね。
その苦労を考えると、このお母さんの様に
“早く大人と同じ物を食べて欲しい!”
“上手に食べてもらいたい!”
というのは、切実な願いなのだと思います。
ちょっとここで注目していただきたいのは、『お子さんの歯、いま何本ありますか?』ということです。
お子さんのお口の中をよく観察してみてください。
インターネットや育児書などでご存じのママもいらっしゃると思いますが、1~2歳頃の子どものお口の中は、「前歯が上下に4本ずつ」、そして「少し隙間があって、その奥に奥歯が上下左右に1本ずつ」という状態です。
この歯の本数で食べられる(消化吸収が十分出来る)食事は
“前歯で噛み切れる大きさ”
“歯ぐきでつぶせる硬さ”
になります。
また、手指の発達のステージで考えると、
“手づかみ食べの時期”
なのです。
我が子がなんでも上手に早く出来るようになる事は、ママパパとしては誇らしい事ではありますが、まだお口の機能が未熟で大人と同じ食事は無理なのです。
手指の器用なお子さんですと、この月齢でももしかしたらスプーンは上手に持つことは出来るかもしれませんが、大人と同じ食材をしっかり咀嚼して消化することは出来ないのです。
「お子さんがいま何を食べられるか?」は、月齢にとらわれずに『お子さんの歯がいま何本あるか』が目安になります。
そして、『離乳完了を決して焦らない事』です。
乳歯が全て生え揃うのは3歳前後が目安ですが、歯の生えている本数に合わせて徐々に食材の形状を変えることで、“食べるおけいこ(咀嚼の練習)”がしっかり出来ます。
噛むことで唾液もよく出るようになり、硬い食べ物の消化を助けます。
また、舌をいろいろな方向にくねくね動かすことで、パサパサした食べ物が飲み込みやすくなります。
さらに、発音発語や顔顎の成長発達にも影響するのです。
離乳期はそのステージにそれぞれの大切な役割があるのです。
もしそれを焦ってスキップしてしまうと大事な機能が育ちきれなくなることもありますし、それは虫歯や歯周病の観点からみてもあまり有利とはいえません。
乳歯が全て生え揃う3歳頃までの食事は、歯の本数(口腔機能の発達)に合わせて焦らずに“食べるおけいこ”をママも一緒にもぐもぐしながらやってみましょう。
食事が楽しくなる呪文の言葉、「どんな味がするかなぁ」「ママも同じ物を食べてみよう」「一緒に食べると美味しいね」などポジティブな声かけをしながら、離乳期の目まぐるしい変化を楽しんでみてください。