日本こども成育協会シニアフェローの所真里子です。
子どもの安全の専門家として研究を進める傍ら
事故防止のための監修、コラム執筆を行っています。
前回は、
暖房器具や加湿器 設置の前に確認したいこと
特にお子さんのいるご家庭で注意してほしいこと
についてお話をいたしました。
今回は「子どもの安全を考えた製品」について
加湿器を例にお話しします。
■見守りや注意だけでは事故やケガは防げません
子どもが事故にあった、ケガをした、と聞くと
「大人が近くにいなかったのか?」
「子どもが注意を聞かずにいたずらしたのでは?」
と思われがちです。
しかし、大人が見ている目の前で起きるのが
子どもの事故です。
また、「触ってはダメ」、「ここで待っていてね」
と約束しても、
好奇心がまさったり気をひくものが視野に入ったりすれば
約束を守れず行動するのが子どもです。
ですから、
もし、子どもが触ったり倒したりしたとしても
安全が守られるような製品が
求められるのです。

■加湿器の事故原因 その1「蒸気」
国民生活センターが2021年に発表した資料には
「加湿器(スチーム式)に手を触れ、やけどをした。
左手の手指・手掌の深達性第Ⅱ度~第Ⅲ度熱傷となり、
手術(デブリードマン・植皮術)を要した。今後、瘢痕拘縮予防の装具装着や将来的な修正が必要になる可能性があり、
長期フォローを要する。 (2021年2月発生、1歳0カ月男児)
等の事故事例が掲載されています。
なぜ、このような重傷を負うかというと、
加湿器から出る蒸気の温度は高温で
数秒触れただけでやけどを負ってしまうからです。
*加湿器だけでなく、炊飯器、ポット、ケトルからの蒸気も同様です
しかし、
放出される蒸気が
高温にならないよう対策がされた加湿器や
気化式、超音波式といったスチーム式ではない加湿器も
製造販売されています。
実際、前述の国民生活センターの調査では、
高温蒸気対策機能のある加湿器とない加湿器を
比べると、蒸気の温度が大きく異なることが
確認されました(イラスト参照)。

■加湿器の事故原因 その2「熱湯」
家庭や施設で使われる加湿器に多いスチーム式は
内部に熱湯を蓄え、蒸気を出しています。
そのため、
加湿器を倒すと中から熱湯がこぼれ出して
やけどを負う事故
が起きます。
棚の上に置かれた加湿器の
電源コードを引っ張り
倒れた加湿器から出た熱湯を浴びて
全身やけどを負う
といったケースもあります。
そこで、
倒れても湯が出にくい機能を備えた加湿器も製造販売されています。
*同様の機能を備えたポットやケトルもあります

■チャイルドロック機能は正しく使おう
子どもが誤って触ったりいたずらしたりしても
電源等が入らないようにする
チャイルドロック機能。
様々な家電に取り入れられるようになっています。
チャイルドロック機能のある
加湿器も製造販売されています。
ただし、正しく使わなければ
効果はありません。
コンセントを抜いたら
チャイルドロック機能が無効になり
子どもがコンセントを刺して
蓋を開けてしまった事故事例もあります。
季節の変わり目は事故が起きやすいときです。
新しい季節を迎える前に
暖房器具や加湿器等の安全点検を
ぜひ行ってください。
本ブログで使用しているイラストは一部
「保育者のための『ハザード』教室」より
引用しています。
*******
日本こども成育協会では、子ども向けイベント、ワークショップ、施設等の「安全の確認」に取り組んでいます。ご
相談等はこちらまでご連絡ください。
https://kodomoseiiku.jp/contact/
ーーーーーー
<執筆者プロフィール>
所真里子(ところ まりこ):子ども製品・保育の安全
【専門分野】
子どもの安全(製品安全、リスクマネジメント、事故予防)
日本子ども学会常任理事
製品安全対策優良企業表彰(経済産業省)審査委員
ISOガイド50(子どもの安全)JIS化委員
【略歴】
ベネッセコーポレーションに20年以上勤め、教材編集、子ども研究、知育玩具や通販
商品の事故事例分析や安全基準づくりに取り組む。在職中に日本女子大学大学院で子ど
もの事故予防を研究。
2013年保育の安全研究・教育センター設立に参加。2021年4月~2025年3月まで、消費
者庁政策調査員として、教育・保育施設、放課後児童クラブ、障害福祉施設、介護施設
等から提出される重大事故報告書(約2500件/年)の調査及び照会業務に従事。
現在は子どもの安全の専門家として、研修講師、保護者への安全講習、製品安全行政
の委員、企業へのアドバイス等を行っている。
<著書>
『イラストで学ぶ 保育者のための「ハザード」教室
~子どもの「危ない!」の見つけ方・伝え方~』(ぎょうせい)