日本こども成育協会 理事の大塚千夏子です。
現在、新しいプログラムを構築するために専門家の方へのインタビューを重ねています。
それと同時に、子どもの最寄りにいる「保護者」へのインタビューも行っています。
今回は、「子育て真っ最中のママ」に伺ったお話をご紹介します。
ママへのインタビューは、「育児における病院やクリニックとのかかわり方」について伺いました。
その中で、忘れられないキーワードが、「“残念”な時間」という言葉でした。
共働き世帯が約7割(2021年厚生労働白書より)となった今、働きながら育児をしていく中で
「時間」のやりくりに四苦八苦するママの実情は、男性の育児休業取得率などに見えるような
意識の高まりを待つことなく深刻さを増しています。
子どもの健康を守るための検診も、今現在ママが担うことが多く、
その「時間」のやりくりには苦労が多いそうです。
保育園の入園条件である予防接種を無事に済ませたり
自治体の健康診断や歯科健診で子どもの健康状態を確認したりすることは
有給などを活用しながらようやく達成できるタスクとなっています。
そのような苦労の中で、ちょっとした一言が大きな分かれ道になる
とお話ししてくださったのがAさんでした。
歯科の3歳児健診でむし歯になりかけの歯があると指摘されたことから
近所の歯医者さんに行くために、自分の仕事の予定や、その子と他の兄弟の習い事の予定を調整。
嫌がる子どもをなだめて歯医者さんにようやく連れていくことができたけれど
とにかく子どもが口を開かない。
無理に口を開けようとすると泣いて興奮状態に陥ってしまった。
結果、むし歯の確認も治療もできずにタイムアップ。
その時に、スタッフから、いたわりに満ちた声でひとこと
「せっかく来たのに残念でしたね。」
その瞬間、彼女はこのクリニックに今後来るのはやめよう、と思ったそうです。
やっと連れて来られたのに治療ができない虚しさを感じていた上に
自分のやりくりがすべて「残念」と言われる結果になってしまいました。
時間が無駄になったのが悔しかったのもありますが、
子どもにも「歯医者さん」という存在をネガティブに感じさせてしまいそうで
「他を探そう」と瞬間で結論付けた、とその理由をお話ししてくださいました。

保護者が、自分の知力と労力を注いだ「時間の価値」は
周りでサポートする人のちょっとした一言で、無駄にも有益にもなるのだ
ということに気づかされるエピソードでした。
インタビューは気づきにあふれています。
これからも協会の大きな仕事として
子どもに関わる「大人」へのインタビューを重ねていきます。
そして、子どもに対しても、ママ・パパに対しても
「今」の時間を「価値あるもの」として勇気づけることができ、
明るい未来を一緒に歩む人が育つプログラムを世に送り出していきます。
私たちの調査インタビューに回答いただける方を募集中です。
・育児休業取得経験のあるパパ
・子どもが保育園に通園しているママ
・歯科クリニックの経営者(歯科医師)
ご興味がありましたらこちらまで、インタビュー対応可(紹介可)と記載して
ご連絡ください。