「こどもが好き嫌いをして食べてくれない」というのは、お母様の心配事でよく挙がるものです。
未就学児のこどもについて言えば、そのころの味覚はまだ発達の途上で、大人よりも敏感な時期です。大人にとって美味しい食べ物でもこどもにとっては食べることが難しい場合もあります。
食の経験を積み重ねながら、いろいろな味を覚えていく段階にあるということを、大人たちは理解し、まずは見守ってあげることが肝要でしょう。
また、お口の中も激変する時期。乳歯が生えることで、舌が活発に動き出し、味覚が発達していくのです。
歯が生えて食べられる物が増えてくれば、嫌いな味に出会ったり、好きな食べ物も移り変わったり、様々な変化が起こります。
そうした味覚や口の発達の時期には、味覚とは別のなんらかの事情で「嫌い」になることもあります。
たとえば、ある物を食べたときに、たまたまお腹を壊してしまった。
その食べ物が原因でなかったとしても、食べ物とお腹を壊したという経験が結び付き、その記憶が長くとどめられることによって、その食べ物に嫌悪感を感じるようになってしまうのです。
これは嫌悪学習、ガルシア効果と呼ばれるもので、心理学でも立証されています。
さらに、周りから食べないことで叱られたり、無理に食べさせようと説得されたりすることは、「食べたくなくなる=拒否」が強められるだけなのです。
冒頭でご紹介した学校の先生も、「食べ物を粗末にしてはいけない」といった背景から残さず食べることを教えようと一生懸命に指導されているのだろうと想像できます。
それを否定するわけではありません。
けれど、こうしたこどもが好き嫌いをする理由にまったく思いをはせず、単に「わがまま」で片づけてしまっては、真の解決には至らないでしょう。
もしかしたら、幼少期に何らかの事情で嫌いになってしまった場合もあるかもしれません。
そうした事情を考慮せず、無理に食べさせようとしても効果は出ないと考えられます。
また、一度嫌いになった物を、好きに転換することはなかなか難しいという研究結果もあります。
ですから、「今食べて欲しい」という思いにとらわれず、時間を味方につけながら、見守ることも大切なのです。
こうした知見に基づいて、いかにお母様の不安や悩みを軽減していくアドバイスができるか。
こども成育インストラクター〈食専科〉では、そうした学びを深めていきます。