シロクマはなぜ餌を取るために水中に飛び込まなかったのか?

先週末、「こども成育インストラクター講座〈食専科〉」の第4期が開講しました。


基本的な内容はもちろん変わりませんが、期ごとに講師の先生方のお話の内容(エピソード)は変化します。


事務局も毎回講義を聴講していますが、特に楽しみにしているのが、「子どもの食行動」を担当されている瀬尾知子先生の“動物動画”です。

動物がどのように食べているか、その行動を見ることで、ヒトの食行動の特徴の理解を深めるために、瀬尾先生が用意されている資料動画です。

これらの動画、瀬尾先生が秋田県内の動物園や水族館に自ら出向かれ、撮影をしています。

なんと、撮影は瀬尾先生のご主人さまが担当!

撮影時のエピソードなども交えてお話くださるのですが、そのお話がとても面白く、長丁場の講義のオアシスのような時間にもなっています。

講義の最後に流された「シロクマの食事風景」。

講義用に短く編集されていますが、実際は何時間もかけて撮影をされているというお話でした。

「食事タイム」の見学をウリにしている動物園が昨今多いですが、瀬尾先生が行かれている動物園でも同様の企画をしていて、時間になるとシロクマのゾーンに人がたくさん集まってきました。

シロクマの食事風景というと、水中に豪快にもぐりながら、獲物をくわえて陸にあがってムシャムシャ食べるというイメージ。

誰もがそういう絵面が見られるだろうと期待して見守っているのですが、当のシロクマくんは陸にまかれた餌を観客に背を向けて食べています。

水中に仕掛けられた餌に手を出すも、皆が期待するような水中へのダイビングはせずに、餌の仕掛けを上手に手でおびき寄せ、陸に引き上げて食べています。

観客からは「もぐらないねー」という、ちょっと期待外れの声も上がっていたそうですが、「食事タイムショー」の前からシロクマを観察、撮影していた瀬尾先生とご主人さまは、「きっとシロクマは水中にもぐらない」とわかっていたそうです。

その前に水中で存分遊んでいて、すっかり毛づくろいをしたあと。なので、乾いた体毛を濡らしてまで餌をとることはしないだろうと。

「行動にはかならず理由がある」

と瀬尾先生はおっしゃいました。

目の前の行動が、期待外れだったとしても、それはこちら側の期待を押し付けているだけで、観察していれば、「なぜ?」という理由がわかる。

理由がわかれば、フラットにその現象を受け止めることができるのです。

同じことが、こどもの食行動についても言えるのではないでしょうか?

せっかくおいしく作ったのに食べてくれない。
昨日まで食べてくれていたのに、なぜ今日は食べないの?
なんで野菜を食べてくれないのかしら

イライラ…モヤモヤ…カリカリ…

でもこれは、「おいしく作ったのだから食べてくれるはず」「栄養をバランスよく食べてほしい」というママたちの期待を、一方的にこどもに押し付けているだけではないでしょうか。

「期待通りでない」とイライラしてしまい、「なぜ?」という理由に、思いをはせることができなくなっているのかもしれません。

シロクマくんの行動から、大きな気づきを得た受講生たち。

学んだことを、より自分事として腹落ちできるようにという瀬尾先生のやさしさと愛情がつまった仕掛けでもあります。

瀬尾先生と一緒に行く「動物園ツアー」の企画も持ち上がっています。

来期はどんな動物映像の新作がご披露されるのか、今からとても待ち遠しい事務局でした。