「食べることがたのしい」「食べることが好き」という気持ちを育むことは
食育という観点からも大切であり、園や学校における食育目標でもおなじみですね。
子どもの成長に携わる大人が重視すべきである「食べる時の環境」について
今回はテレビアニメの一コマから感じたことを書いてみました。
子どもたちのなかで解決!きっかけがたくさんあるお友達との食事風景
先日、国民的アニメーションのひとつである『ちびまるこちゃん』を見ていたところ
「なんでもこえにだしてみよう」という回が放映されていました。
胃腸が弱い山根くんが見出した「ごはんをしっかり食べる方法」を
まるちゃんに話すシーン。
私は「これはいい!」と手が止まりました。
どうやって食べることができたのか…
山根くんは、同じクラスメイトにいる大食いキャラの小杉くんの食べる姿を
参考にしていたのです。
胃腸が弱い自分と、小杉くんはなぜ違うのか、そしてなんで食べられるのかを
観察していました。
観察の結果、見出したのは「うまいな〜」という声を出して食べていた
という行動でした。
誰かがいる場だからこそ得られる「楽しくたべる経験づくり」の重要性
山根くんは自分で問題を感じ、自分で行動し、結果を出したのですね。
3年生という子どもながら、すごいなと感心してしまいました。
私は、少しでも食事を楽しめる人に育ってほしいという思いから
料理に対して、いろいろと声に出すことを心がけています。
単に自画自賛の「おいしい」ではなく、
「今日のごはん、すごくもっちり炊けたよ〜おいしい」
「今日のお味噌汁のお出汁がとってもしみるな〜」
「今日のお野菜、●●が優勝!」
など「食べて幸せ」と感じる言葉を積極的に発しています。
こういう言葉なら、「ええ、そう?」と興味を持ちませんか?
興味までいかなくとも、嫌な気分にはならない食卓の会話となります。
食べてみたいなと思わせるこれらの言葉。
このようなセリフ全員話しましょうという強制はしませんが、
何を食卓で話すべきかと悩んでいる人にはヒントになるのはなでしょうか?
せっかく食べるのだから幸せにいただきましょう
楽しい気持ちを感じながらの食事で、山根くんはこのあとどう変化していくのか
栄養士としては関心を高く、むしろヒアリングしたいくらいです。
同じ栄養価の食事でも、楽しい気持ちで食べる食事と、暗い・悲しい気持ちで
食べる食事では、消化機能が大きく異なります。
楽しい気持ちは、胃腸をぐんぐん動かしてくれます。
胃腸の弱い山根くんには、実は有効な食べ方なのです。
アニメですので、もちろんそんなくだりはありませんが、口から入った食事(栄養)が
どのように消化・吸収 していくかが、その後の健康やげんきにつながる食べ方です。
また、この習慣化で胃腸の弱い山根くんキャラは変わっていくかもしれませんね。
食べ物からの栄養をとる手段として食事は重要ですが、栄養と同時に
心の栄養をいただく機会です。
「食べて幸せ」という経験を育む声がけを、給食や共食のシーンでは
心がけられるといいですね。
子どもの育ちを見守る大人のみなさん、作ってくださる方に声に出していますか?
このお米作ってくれた人、すごい
この野菜を作ってくれた人、ありがたい
この料理を作ってくれた人、ありがとう
これ食べたら元気になるね〜
食べて幸せ〜
春だね〜(ニコニコのスマイルとともに)
「食事がでてきて当たり前」ではないことに感謝し、「食べられる幸せ」を
言葉でぜひ表現してみてください。
環境が変わる春はより食卓に小さな幸せを感じる言葉を声に出してみては?
卒園・入学・引っ越しなど春はとても環境が変わりやすい時期。
意識していないところでも緊張をあじわうことも多い日々です。
まだ「黙食」が推奨される集団給食のなかではありますが、
少しでも大人たちから「食べる・食べられる幸せ」を伝えてください。
そして、ご家庭でも「小さな幸せごっこ」が食卓でひろがることを期待します。
隅弘子 一般社団法人日本こども成育協会食専科ディレクター・管理栄養士
【略歴】
mamaful(子育てが楽しめる支援をいっぱいに)を屋号に乳幼児を育てる保護者支援を中心に活動している。
都内子育て支援施設内での食事相談・離乳食教室の開催をはじめとして各種講座の講演や企画を行う。
子育て支援サイトや保育士求人サイト内でのコラム記事協力を行う。